当事務所での相続登記の流れ
2021.09.15
前回は、相続登記の基本的なことをご紹介しました。
今回は、当事務所に相続登記をご依頼いただいた際に、どのように手続きを進めているのかをご紹介します。
1.面談
お電話やメールフォームでご連絡いただきましたら、当事務所や依頼者ご自宅などで面談をさせていただきます。
面談の際には、可能であれば次の書類をご準備いただきます。
- 最新の固定資産税納税通知書・課税明細書(毎年5月ごろに市町村役場から届いています)
- 亡くなられた方の戸籍、住民票関係
面談では、どなたがどの不動産を相続するのかの確認のほか、家族関係や、不動産の利用状況、時には不動産以外の遺産についてもお聞きします。関係ないように思えることもお聞きすることがありますが、後で依頼者がお困りにならないよう、アドバイスさせていただくために色々とお聞きしています。
時には相続税のことも考慮しながら話をさせていただくこともあります。
また、この時に費用の概算をお伝えします。その後の様々な調査結果によっては費用が大きく変動することがありますので、正確なお見積りは以下の調査後にお示ししています。
遠方の方であれば、ひとまずは郵送・メールやお電話などで進めることも可能です。逆に鳥取県外に不動産がある場合でも、問題なく手続きが可能です。
2.戸籍調査
合意が必要となる法定相続人が誰かを確定するため、亡くなられた方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本などを調査します。
既に依頼者が取得されている戸籍があればお預かりし、不足があれば当職で取得させていただきます。
兄弟姉妹が相続人になられるケースや、亡くなられてから長期間経過しているケースなどは、この戸籍取得が非常に手間がかかります。取得する件数も多く、また県外に郵送で請求することも多くなり、調査完了まで1~2か月かかることも珍しくありません。
3.不動産の特定
亡くなられた方が所有していた不動産を漏れなく確認するため、固定資産税納税通知書(課税明細書)を確認します。
また、市町村によっては固定資産税が非課税の不動産(公衆用道路など)は納税通知書に記載されていませんし、そうでなくても漏れがある場合がありますので、改めて市町村役場で固定資産税課税台帳(いわゆる名寄帳)を取得します。
この課税台帳で共有地が発見されることがよくあります。近隣住民の数名で共有されている場合もありますし、山間部では集落所有の山を便宜上共有名義で登記されているケースが多いです。
また場合によっては、亡くなられた方がお持ちだった登記済証(いわゆる不動産権利証)も確認させていただきます。
ただ、どれだけ調査を尽くしても、100%漏れがないとは言い切れません。逆に言えば、しっかりとした調査をしておかないと、簡単に漏れが出てしまいます。
4.登記簿の調査
特定した不動産について、登記簿の情報を取得します。
まずは登記簿に記載された現所有者の住所・氏名を確認します。これが亡くなられた方の本籍地や住民票の住所・氏名と一致すれば問題ないですが、一致しない場合があります。特に住民票はこれまでは保存期間が5年でしたので(現在は150年保存)、昔の住民票が取得できず、一致させることができないことがあります。
この場合は、登記済証や上申書など、別に証明する書類を検討します。
また、登記簿に所有権以外の権利が登記されていないかどうか、確認します。例えば古い抵当権(銀行からの借入の担保にしていたということ)の記載があり、借り入れは完済されていても登記だけ残っていることもあります。この古い抵当権は残したままでもひとまずは問題ないですが、売却するときに支障となりますので、抹消手続きについてもご案内させていただきます。
宅地については、そこに建物の登記が存在しないか確認します。全ての不動産を長男が相続する、というご相談を受けたときに、そのうちの土地の一つに二男さんが自宅を建てておられたので、「その土地は二男さんが相続された方が良いですね」となるケースもあります。
取壊し済みの建物の古い登記が残っている場合は、その登記を消す手続きをご案内します。
このように、意外とたくさんのことを登記簿で確認しています。
5.登録免許税の計算
登記手続きには登録免許税という税金を、登記申請と同時に国に納める必要があります。
基本的には固定資産税納税通知書等に記載された評価額の0.4%が税額になりますが、一定要件を満たす土地は非課税となります。
また、固定資産税課税上の面積や地目が登記簿と異なる場合は、登録免許税の計算で調整が必要になります。
6.捺印書類のお渡し、お見積り
以上の調査を踏まえ、当事務所にて委任状や遺産分割協議書、正式な見積書を依頼者の方にお渡しします。
依頼者には、相続人全員から遺産分割協議書への署名捺印(実印)と印鑑証明書を取って頂きます。
7.登記申請
依頼者から書類をお預かりした後、登記申請をします。
登記完了後、法務局から新たな不動産権利証(現在は「登記識別情報通知」といいます)が発行されますので、戸籍等と一緒に依頼者にお返しいたします。
一緒に費用の請求書をお渡ししますので、後日振込等でお支払いをお願いいたします(ただし、登録免許税が高額になる場合は、登記申請前に費用をお預かりすることがあります)。
まとめ
以上がざっくりとした相続登記の流れです。
費用としては、家族関係や不動産の数・価値によって大きく変動はしますが、鳥取の場合は、一般的なケースで実費を含め10~15万円程度になることが多いです。
中には「高い」と感じられる方もあります。正直、専門家に頼まなくてもご自身で手続きができるのであればそれに越したことはないですし、なんでこんなにややこしい手続きなんだろうと思うこともあります。
ただ一方で、不動産は高価な財産です。簡単に名義が書き換えられてしまうのは、それはそれで問題だろうとも思います。
いずれにしても、大切な方を亡くされてご心痛の中、膨大な相続手続きをご遺族の方だけで進められるのは、非常に負担が大きい作業だと感じます。
少しでもご遺族の方のご負担が軽くなるよう、当事務所でお手伝いさせていただければ幸いです。